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日活撮影所で「嵐を呼ぶ男」のメイキング見学が19歳の映像修業の初体験でした。

「ニコニコ動画」クリエイター支援強化へ ボカロPらの創作と収入はどう変わる?

ドワンゴは10月3日、動画サービス「ニコニコ動画」上で創作活動を行うユーザーが、月額課金やコンテンツ課金の形でファンから直接報酬を得ることができる「ユーザーチャンネル」機能をリリースすると発表した。企業や著名人が開設している「ニコニコチャンネル」と同様に、投稿動画、生放送、ブロマガを一括で管理できるプラットフォームで、クリエイターは、チャンネル会員から月額課金や都度課金で報酬を得られる。利用希望者を公募し、第1弾として12月に約15チャンネルを開設する予定で、応募条件は、自身のお気に入り登録もしくはコミュニティ参加者が1万人以上いること。全ユーザー中約1000人が該当するという。来年2月には第2弾を募集し、来年中に100チャンネルを目指すとのことだ。

 「ニコニコ動画」ではこれまでも「クリエイター奨励プログラム」などでユーザーの創作活動を支援してきた。同サービスでは2011年12月のスタート時から今年5月までの時点で、7153人に5億9355万円を支払った。100万円以上受け取ったユーザーは125人、1000万円以上は7人に上るという。

 ファンから直接収入を得られることとなり、ボカロPなどのクリエイターにとってはより収入源の選択肢が拡がったといえる今回の施策。この状況を専門家はどのように見ているのだろうか。音楽ライターの柴那典氏に話を伺った。

ドワンゴ川上量生会長は、常日頃から『僕はニコニコをみんながお金を稼げる場所にしようとしている』と語っています。2011年に始まった『クリエイター奨励プログラム』も、この発想がもとになっているのは間違いないでしょう。そういう意味で、今回の『ユーザーチャンネル』は川上さんのビジョンが順調に形になっているな、という印象です」

ユーザーチャンネル」の課金額は、チャンネル開設者が自由に設定できるが、決済手段の都合上105円~1575円までを推奨している。収益のうち7割はチャンネル開設者に支払い、残り3割は手数料としてニコニコ側が得る。自身のお気に入り登録もしくはコミュニティ参加者が1万人として、そのうち1000人が月額300円を支払ったとすると、月に21万円の収入になる計算だ。今後は「ニコニコ動画」で食べていく、というミュージシャンも増加していくのだろうか。

「その可能性はありますね。先日の発表では年間500万円以上稼いでいる人が17人いました。コミケや即売会のCD売り上げを含めば、その数はより増えると見られます。今年初めに、自らニコニコで『生放送』を行っているロンドンブーツ1号2号・田村淳さんと川上量生会長の対談取材を担当したのですが、そこでお二人が話していたことが印象的でした。田村淳さんは、吉本興業の芸人は全部で6000人くらいいて、そのうち食べていけるのは300~400人だと話しています。テレビに頼らずとも自前の劇場を持っていることでそれだけの数の芸人が定期的な収入を得ることができるわけです。一方、川上量生会長は今後数年でニコニコの収入だけで暮らしていける人を数百人規模に増やしたいと言っている。つまり、スケールの話として考えると、数百人のクリエイターが報酬だけで生活していくことができる状況というのが、一つの分岐点になる。そうなれば、吉本興業がお笑い文化のプラットフォームとして成立しているように、『ニコニコ動画』がネット文化の発信源として、安定したプラットフォームになりうるということです。現状では選ばれた数少ないユーザーだけがチャンネルを持てるという状況ですが、この人数はどんどん拡大していくでしょう。一般のユーザーがクリエイターになれるのがニコニコの大きな特徴なので、ミュージシャンに限らずニコニコで生計を立てる表現者は増えていくと思います」

 ボカロPや歌い手、踊り手といった、新たな形のクリエイターが生まれてきたニコニコ動画じん(自然の敵P)のような有名プロデューサーも輩出しているが、今後は「ユーザーチャンネル」でファンから直接収入を得られるようになり、表現者にとっては「ネットの発信で食べる」ということがより現実的になっていくのではないだろうか。