お役に立つ動画研究所

日活撮影所で「嵐を呼ぶ男」のメイキング見学が19歳の映像修業の初体験でした。

支局長評論:下関 動画の威力 /山口

毎日新聞 2013年09月23日 地方版

 観客に片っ端から声をかけたが、誰も首を縦に振ってくれない。佐賀支局に勤めていたころにあった熱気球の落下事故。乗っていた男性が大けがをした。会場を歩き回ったのは墜落の瞬間の写真を手に入れるためだ。

 「現場に着いたら写真を探せ」と新聞社に入って教えられた。自分で撮影していなくても、誰かが写真を撮っているかもしれない。なんとかフィルムをお借りして、新聞に写真を掲載するのは時折あることだった。熱気球の事故では結局、前日に写真部員がヘリから撮影した同型機の写真を使うしかなかった。

 古い話を思い出したのは最近、目にすることが増えた竜巻のニュースのせいだ。新聞には上空から黒々と垂れ下がった雲の様子が載っている。写真だけではない。テレビでは地上から物が巻き上げられて飛んでくる様子が流れている。まるで映画のよう、と言っては例えが古いが、現場の臨場感が伝わってくる。

 おそらく動画機能がついたスマホの普及で、誰もが決定的な瞬間を撮れるようになったためだろう。動画どころか、いまだにスマホをほぼ電話機としてしか使っていない私は感心するばかりだ。

 動画といえば、目を引いたのが東日本大震災被災地をめぐる検索大手、グーグルのストリートビューの話題。地上の車から撮影した世界中のまちの映像を360度、パソコン画面などを通じて自由に見ることができる。これ自体は以前からあったが、東日本大震災の避難指示区域の映像が最近新たに加わった。

 震災から2年半たった今も許可なく敷地内に立ち入ることができない避難者に、懐かしいまちの様子を伝えるのが狙いの一つだという。遠く離れた避難先で、無人の通りを、道路沿いに咲く花を、そしてかつて我が家があった場所を避難者はどう見るのだろう。パソコンの画面を眺めながら技術の進歩に脱帽した。<下関・西貴晴>

〔下関版〕