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日活撮影所で「嵐を呼ぶ男」のメイキング見学が19歳の映像修業の初体験でした。

求められているのは、顧客支援を通じて「価値を創造する」ことのできる販売員である──コトラー『マーケティング・コンセプト』

 YTS派「叫んで、語って、売る(Yell, Tell, and Sell)」とかS&P派「ばらまいて、祈る(Splay and Pray)」とかLGD派「昼食、ゴルフ、晩餐(Lunch, Golf, and Dinner)」などの流派はあるが、いずれにしても、販売にはあまりいいイメージはないとコトラーは言う。 
 では、求められる販売員とは何だろうか。 
 たとえば工作機械メーカーの仕事はドリルを売ることにある。しかし、「ドリルを販売するのではなく、穴を販売するのだ」と発想を変えてみたらどうだろうか。 
 単にドリルという製品を売り込むのではなく、ドリルを買うことによってお客さまが得られる利益や成果、価値を売れ、ということだ。大切なのは「何ができるか」である。ドリルを買うことで生産効率が上がるとか、ランニングコストが下がる、これまでできなかった作業ができる、ということになれば、売上だって伸びるはずだ。 
 コトラーは言う。 
 「『モノを売るのではなく、顧客の発展を支援する』をモットーとして掲げるべきである」 
 「いま新たに求められているのは、顧客の金儲けや節約を支援することを通じて、『価値を創造する』ことのできる販売員である」 
 ほめる達人、「ほめ達」こと、西村貴好さんからこんな「価値創造」を試みた自動車の営業マンの話を聞いたことがある。 
 日本の車の品質は折り紙つきだ。そのため多くは下取り価格や値引きといった価格勝負になるが、この営業マンは「車は家族の大切な思い出をつくるためのもの」と考え、契約や納車の際に車とお客さまのツーショット写真を撮り始めた。それらをアルバムに貼り、1ヶ月点検の時にお客さまに渡し、白紙のページにこう書き添えた。 
 「この車で楽しい思い出をいっぱいつくってください」 
 たったこれだけのことで車は、単なる製品から、思い出をつむぐ素晴らしい価値あるものに変わった。価格競争とは別の付加価値を提案することができたこの営業マンはやがて最優秀営業マンとなった。 
 モノを売るだけでなく、価値を創造し、価値を提案することで販売のやり方は大きく変わってくる。これからの時代、販売員には顧客の発展を助けるとか、顧客に新たな価値を提案する力が求められるのである。 

執筆:桑原 晃弥 監修:西村克己

http://www.blwisdom.com/marketing/series/great/item/8869-07.html?mid=w414h90200001369923

(2013年6月7日公開)